24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~

「本当に、大丈夫なので!」

 伊鈴は明るい声を出して、笑顔を作りなおす。
 作り笑いは、仕事の商売道具だ。取引先の大して楽しくない近況を聞いてリアクションを取るのも、上司の聞き飽きた自慢話を褒めて持ち上げることも、随分上手くなったと自負がある。

 どんなに失恋で傷んだ心がキリキリと音を立てても気にしない。これは自分の都合であって、立花には関係ないのだ。


「出会ったばかりの相手だからこそ、話しやすいこともあると思いませんか?」
「…………」

 未だにこぼれる涙を拭ってくれる立花の指が優しい。
 痛む心に触れ、撫でて、甘やかしてくる。


「どんなことを聞いても受け止めますよ」

 マスカラが乗ったまつ毛に、涙の小さな粒が宿って綺麗だ。
 泣いて少し赤くなった鼻頭も、濡れた瞳もかわいい。

 泣いている伊鈴に見惚れながら、言葉を探す。


「俺に、話してみてくれないかな?」

 立花は穏やかに声をかけ、彼女の右手をそっと包み込んだ。

< 47 / 146 >

この作品をシェア

pagetop