24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~
「本当に、大丈夫なので!」
伊鈴は明るい声を出して、笑顔を作りなおす。
作り笑いは、仕事の商売道具だ。取引先の大して楽しくない近況を聞いてリアクションを取るのも、上司の聞き飽きた自慢話を褒めて持ち上げることも、随分上手くなったと自負がある。
どんなに失恋で傷んだ心がキリキリと音を立てても気にしない。これは自分の都合であって、立花には関係ないのだ。
「出会ったばかりの相手だからこそ、話しやすいこともあると思いませんか?」
「…………」
未だにこぼれる涙を拭ってくれる立花の指が優しい。
痛む心に触れ、撫でて、甘やかしてくる。
「どんなことを聞いても受け止めますよ」
マスカラが乗ったまつ毛に、涙の小さな粒が宿って綺麗だ。
泣いて少し赤くなった鼻頭も、濡れた瞳もかわいい。
泣いている伊鈴に見惚れながら、言葉を探す。
「俺に、話してみてくれないかな?」
立花は穏やかに声をかけ、彼女の右手をそっと包み込んだ。