24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~
せっかくの誕生日なのに、最悪の気分だ。
そして、今日ほど由紀と別の部署でよかったと思ったこともない。
これから誕生日デートに行く由紀を見送る気も起きなかっただろうし、同じ誕生日だと知る同僚がいたならば、「十河さんもデート?」なんて、傷口に粗塩をグイグイと塗りこまれるようなことを言われただろう。
18時半過ぎ、伊鈴は業務を終え、引き留められる前に挨拶をして営業部を出た。
秋は感傷的になると聞いたことがあったけれど、今日のこれは感傷的どころではない。
れっきとした失恋と、裏切られたことへの怒りと、友人を傷つけてしまうであろう自分の不甲斐なさで、どうしようもないのだ。
かといって、捨てられた側がまっすぐ帰宅し、金曜の夜をいい子ちゃんでひとり寂しく過ごすつもりもない。
それに、1年に1度の誕生日を楽しむ権利は、伊鈴にもある。