24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~
「とびきり贅沢な甘いものを食べたいなぁ」
レストランでディナーをして、雰囲気のいいバーで軽く飲み、ふたりのこれからを話す……。そんなプランを描いていたけれど、叶わなくなってしまった。
だから、レストランにもバーにも行きたくないし、もっと正確に言えば、おひとり様が浮いてしまうような店は回避するに限る。
(デートしなくても、楽しく過ごせればいいのよ。誕生日は)
伊鈴は、ひとりで過ごせる店を求めて、虎ノ門からメトロに乗って銀座駅で降りた。
「どこに行こうかな……」
雑踏の中スマートフォンを取り出して、時刻を確かめると19時前。
営業時間外かもしれないけれど、以前グルメ雑誌のスイーツ特集でランキング1位だった、老舗和菓子店に行ってみることにした。
駅から歩いて5分ほど。『御菓子司 立花』に着いた。初めて来たので勝手がわからないが、抹茶色の暖簾が出ていて、明かりも灯っている。
引き戸をそっと開け、伊鈴は店内を伺うように顔を出した。
「こんばんは」
伊鈴が声をかけると、和菓子のショーケースの向こうで背を向けている和装の男性がゆっくり振り返った。