24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~

 東銀座の一角に車が停められ、路地裏のうどん屋に入った。
 黒い木製テーブルにラミネートのメニューが置いてあり、昔ながらの雰囲気にほっこりした。こういう店にはランチで行くこともあって慣れている。

 ふたりが向かい合って座るなり、すぐにお冷が出され、伊鈴は紀州梅と昆布のうどん、立花は地鶏ときつねのうどんを注文した。

 土地柄、1000円以上のメニューが大半だが、値段に見合う美味しさに空腹は従順だ。
 優しい昆布だしで疲れた身体が温められ、添えられている梅干しの酸味が食欲を煽り、元気が戻ってきた気がする。


「立花さんって、美味しいお店をたくさん知ってそうですよね」
「お客様からご紹介いただくことが多いんだけどね。実際に足を運んで、紹介してくれたお客様にちゃんと感想を言わないと悪いし、そうやって過ごしてたら、いつの間にか行きつけが増えたりしてるもんだよ」

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