略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~

 これまで、婚約していることに不安を感じたことはなかった。
 
 恋愛の駆け引きなんてすることなく、将来は安泰なのだと信じ続けてきた。

 それなのに、ここに来て美郷の目の前には不安しかない。


「するなよ、そんなやつと結婚なんか」


 決定的なことを口にされて、美郷は大きく目を見開いた。

 自分の中に、そんな選択肢は存在しなかったからだ。


 婚約破棄――――。


 美郷が背負うすべてのものを放棄する言葉にぞっとして、匠海の目を見たまま首を横に振った。


「それは、ありえません……」

「どうして」

「祖父が……そうして欲しいと言っていたからです」

「頭取が?」


 瞬きできないままこくりと頷く。

 匠海は驚いたように、美郷を見つめ続けた。


「ちょっと、待って……。乙成頭取の意向はわかった。
 けど、ひとつ聞きたい。
 ……美郷ちゃんは、その人と結婚したいと思ってる?」
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