略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
 本部長席で決裁書類を捌いていた彼は、誰よりも早くワンコールを待たずに受話器を取り上げる。

 彼は肩書きばかりのお飾りではない。

 普段から率先して業務に携わる部下からの信頼も厚い理想の上司だ。


「――ええ、はい……はい」


 挨拶し損ねたままでは退社しづらく、せめて頭を下げてから帰ろうと本部長を見やる。

 白髪が出てきたとぼやいてた短めの髪を軽く分け、同性の同僚からも男前だと評される四十代後半の紳士。

 さすがの美郷も納得のイケおじな彼は、電話に応対しながら何やら物言いたげにじっと美郷を見つめてきた。

 
「……はい、居ります、ええ」


 見留めたまま『居る』と言っている本部長は、どうやら美郷のことを指しているらしい。

 首を傾げていると、案の定、彼の男らしい節ばった指がちょいちょいと美郷を手招いた。


「お待ちください」


 保留ボタンを押した本部長が、美郷に受話器を向ける。


「U&Kの結城部長だ。信託課に至急確認したいことがあるそうだ」

「ゆ、結城部長、ですか……?」


 電話の相手は、匠海だったようだ。
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