略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
「私で務まることでしょうか」


 どきりと胸が動揺するのは、匠海とはあまり業務に関することを話したことがなかったからだ。


「課の者なら大丈夫だそうだ。とりあえず取り合ってくれ」

「は、はい……」


 働き始めて1年半が過ぎ、信託課のことであれば美郷もある程度のことはわかる。

 けれど、相手が大手一流証券会社の敏腕ブローカー・結城匠海だと、身構えてしまうのは致し方ないことだ。


「代わりました、信託課乙成です」


 恐る恐る受話器を構え、緊張を抑えた声で応答した。

 いつものあのふわふわとした軽い声が返ってくるのを待っていると、受話器の向こうに沈黙が走った。


『…………』

「もしもし……?」

『あ……ああ、美郷ちゃん。お疲れ様』


 出先からだったのか電波状況が悪かったのかともう一度呼びかけると、少しだけ戸惑った匠海の声が優しく応えてくれた。

 電話の向こうで目元を細めているかもしれない匠海の笑みを想像して、思わず瞬きが増える。
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