略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
*


「先輩もう帰った方がいいんじゃないですか?」

「え?」


 ぼうっとパソコンの画面を見つめ、キーボードに載せた指は固まったまま。

 隣から理子に声を掛けられても、ゆっくりと顔を振り向かせる美郷は心ここに在らずな表情だった。

 美郷の心を捉えたまま離れないのは、昼休みの出来事だ。


 ――――『美郷』


 食べたような気がしない食事を終え、テラスを出ようとしたところで、強くない力で手首を掴まれた。

 振り向かされた美郷は、匠海の長い指に顎を掬われ、何度も絡む視線に容易く身体を縛り付けられた。


 ――――『だめです、匠海さん……』

 ――――『嫌だと思ってないから、やめない』


 誰もいないフロアの壁にとんと背中を追われ、逃げる間もなく再び重なった口唇に、呆けた美郷の隙をついて匠海は咥内に侵入した。

 階下に聞こえていたざわめきは遠くなり、腰の抜けるような甘いキスをやめないで欲しいと思った。
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