略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
「せ、先輩……!?」


 さっきの記憶に何度も思考を奪われる美郷の肩を、理子が強く揺すった。


「ティッシュ! 鼻血出てる!」

「え?」


 理子に言われて下を向くと、ぽたっとした粘着質な音で、机上に赤いインクが弾けたような模様が出来た。

 慌てる理子はティッシュを数枚取り出して、美郷の鼻に当てがった。


「何があったかは後でじっくり聞かせてもらいますから、とりあえず休憩室で休んでてください」

「ご、ごめんなさい……」


 思春期の男の子じゃあるまいし、キスしたことを思い出したくらいでリアルにのぼせるなんて、精神的にも身体的にも美郷は年相応にはなりきれていないのかと落ち込む。

 それもこれも匠海のせいなのに、彼を思い出すとまた顔が沸騰しそうになる。

 エレベーターの手すりに身を預けるようにして1階にある休憩室まで辿り着くと、さっき誰かが買っていったであろうコーヒーの香りに一旦思考が落ち着いた。

 昼を過ぎた休憩室は人の姿はなく、奥の方に入り込んだところにあるリクライニングソファで休むことにした。

 ふかふかとした座り心地に身を沈めて、目を閉じると、また瞼の裏に匠海の姿が浮かんできた。
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