略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
――――『美郷』
何度も自分を呼んでくれる優しい声が、胸をどきどきと急かしてくる。
美郷を見つめては優しくくれたキスの甘さが、口唇から一向に消える気配がない。
体温を上げるような記憶に、鼻血が止められなさそうで少し強めに鼻を摘んだ。
息が苦しい。
喉の奥の方で、心臓がどくどくと強い音を立てて脈を打っている。
鼻を摘んでいるから苦しいわけではないことを、美郷は自覚していた。
……ああいうことは、結婚相手とするんだって思ってたのに……。
抱きしめる腕に大人の男の人を感じさせられた。
触れた口唇は、この前の子供だましのキスではない、大人の男女が交わすものだった。
聞いたことのない自分の甘く上がる息が恥ずかしくて、逃げようとしても、匠海はすぐに美郷を捕まえ、何度も口付けてきた。
甦る記憶を【無】で消そうと呼吸をすることだけに集中していると、バタバタと駆ける足音が遠くに聞こえた。