略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
遠かった足音が近づいてくる気配に、ふっと瞼を上げる。
すぐそこに迫った気配を感じてソファから身体を起こすと、美郷のいる場所を狼狽えた様子でうかがう匠海が姿を現した。
「美郷……っ」
「匠海さん……?」
はあはあと息を切らして、膝に手をつきうなだれる匠海。
乱れた髪と襟が片方だけ立ったジャケットに、彼がなりふり構わず走ってきたことを伝えた。
「大丈夫? 倒れたって聞いて……」
「え?」
匠海は髪とジャケットを直しながら、リクライニングソファにゆっくりと歩み寄る。
近づく気配に、美郷は顔を背けて鼻と胸をぐっと押さえた。
脳裏に焼き付いて離れない記憶と、目の前に現れた本人にまたしても眩暈が襲う。
「理子ちゃん、だっけ。信託課から電話あって、美郷が倒れたから自宅まで送ってやってほしいって言われて」
理子のにやける顔が想像できて、唖然とする。
余計なことを言う後輩に呆れる美郷のそばに、匠海は心配そうにひざまずいて下から覗き込んできた。