略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~

「ブラックでよかった?」


 声を掛けられて、はっと芳ばしい香りに気づく。

 湯気を立てたカップをふたつ持ってきた匠海へ振り返った。

 彼は、美郷のことをよく知ってくれている。

 優しい笑みで見つめながら、ローテーブルにコーヒーを置き隣に座る匠海。

 そんな彼とは違う人と結婚しても、幸せになれる可能性を見いだせないことに、胸を痛めているんだと気がついてしまった。


「美郷?」


 じっと見つめる美郷に匠海が首をかしげる。

 太陽の光を取り込む琥珀の瞳の中に自分の影が映りこんでいる。

 それだけで、自分が匠海のすぐそばにいるのだと実感して、このひとときがとても儚いものなのだという現実に、目の前が滲んだ。

 目を見張る匠海から、視線を落とす。

 ずっとは続かない時間。

 すぐにでも消えてなくなってしまうことが哀しい。

 このまま匠海のそばにいれば、心はきっと幸せになれるんだろうとわかってしまったのに。
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