略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~

「コーヒー、ありがとうございます」


 気づいた心に蓋をして、カップに手を伸ばす。

 考えてみれば、自分が選んだ道だった。

 両親に憧れて、お見合い結婚が一番なのだと信じてきたのだから。

 それを今さら覆すなんて、身勝手にもほどがある。

 大丈夫だ、まだ引き返せる。

 今日は仕方がなかった。

 匠海が強引だったから。

 匠海が優しかったから。

 彼の優しさと情熱に、ほんのちょっとのぼせてしまっただけだ。

 コーヒーに顔を寄せる間もずっと、隣からの匠海の視線を感じる。


「とってもいい香りですね。もしかして、ご自宅でコーヒー豆挽いてます?」


 無理矢理に口角を上げて、気分を紛らわす。

 コーヒーの香りには気持ちを落ち着かせる効果がある。

 浮かれた気持ちも、沈みゆく気持ちも、苦いコーヒーとともにごくりと飲み込んだ。


「よくわかったな。いつも豆だけ買ってる。
 週末、一緒に見に行こうか。いい店紹介するよ」


 あからさまなデートの誘いに、胸がきゅんと鳴る。

 カップを置いて、ゆっくり匠海と視線を合わせると、美郷は感情を抑えた声で答えた。
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