略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
トラウマというほどのものではないけれど、婚約者が他の女性といたことに多少なりとも受けたショックを思い出したからだろうか。
ここまで浮かれたようにやってきた自分にぞっとする。
小さな自尊心に傷がつくくらいの出来事だったのに、今度は自分が同じ過ちを犯している。
浮上していくエレベーターの重力に、頭が重くなった。
うつむく目線の先で、握りしめた白の紋が入った淡い緑色の紙袋。
匠海とふたりで食べる姿を想像しながら商品を見ていたさっきの自分に、ずきりと胸が痛んだ。
こんなふうに匠海と会って、それからどうしようというのだろう。
ずっと続くわけではないほんのひとときのあたたかな時間を得ても、いつかはなくなってしまうのに。
そしてそれが無くなってしまった時の淋しさを想像してしまった。
ふと気づくと、目の前の扉が開いていた。
12階フロアの一角の扉に、先に目が行く。
そこで待つ匠海の姿を想像し、胸と目頭が熱くなった。