略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
*


 二階の銀行フロアからエスカレーターで降りて行くと、吹き抜けのエントランスのガラス張りの向こうに、車の行き交う大通りが見える。

 車のライトがちらつく闇の中から、自動ドアを潜ってくる彼に会釈をした。


「助かったよ、ありがとう。残業までさせてしまって、悪かったね」


 匠海が小走りで入ってきた入口からは、冷たいビル風がここぞとばかりになだれ込んできた。

 このまま帰れるようにと着替えてきたベージュのトレンチコートの中で、冷気から身体を守るように身を縮める。


「いえ、このくらい。あ、本部長には決裁印いただいてますので」

「うん、ありがとう」


 匠海にレールファイルに綴った資料を渡し、風に弄ばれた長い髪を軽く手ぐしで整えて、目の前の長身を見上げた。

 明るいグレーのステンカラーコートが、匠海の長身によく似合っている。

 襟を立てていても嫌味じゃないのは、彼の爽やかな出で立ちのお陰だろう。

 なんだかいつもと違う雰囲気に、今は眼鏡をしていないからだと気づいた。
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