略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
「信託課がいなければ他に頼もうと思ってたんだけど。まさか、美郷ちゃんがいるとは思わなかったよ。
 せっかくの週末なのに、婚約者さんとのデートはないのか?」


 ビジネスバッグに資料をしまう匠海を前に、心臓がびくりと縮んだ音を立てる。


「今日は、あの……忙しいらしくて……」

「ふうん、そうなんだ」


 ふと過る沈黙の中、琥珀色の眼差しが美郷の中の何かを探ってくるようだ。

 あまりにじっと見つめてくる瞳が、なんだか妙に怖くて、ゆっくり視線を落とした。


「こんな可愛い婚約者ほっぽって。そいつがどんな顔してるか、見てやりたいよ」


 嫉妬、でもしてくれているのだろうか。

 あながち勘違いでもないかもしれなくて、美郷の心臓は気恥ずかしさでほんのりと熱を持つ。


「どんな、って……素敵な方ですよ。それに、とてもお忙しい方なんです」


 婚約者のことは、これまで匠海との会話に限らずあまり話題に出したことはない。

 多くを語れないまま、匠海は「そう」と気のない相槌を返した。
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