略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
大きなマンションが近くに見えてきたところで、入口付近に客を降ろしたタクシーが美郷とすれ違って行った。
ゆっくり歩いてきたつもりだったけれど、やはり早い時間だったかと反省しつつ、匠海に会いたいと思っている自分に素直に従う。
どきどきと急かされる鼓動に頬を温めながらエントランスに近づいたところで、ガラス張りの向こうにいつかの淡いピンクのコートが見えた。
どくりと大きな音で脈が乱れる。
数日前に聞いた噂話が頭を巡った。
エントランスの自動ドアが開かない距離を保ち、心臓の音を堪えて中を覗く。
エレベーターの木目の扉の前で待つすらりとしたモデルのような雰囲気を醸す女性に、目を見開いた。
その場で動けないまま、彼女が乗ったエレベーターを見送る。
やっぱり、陽翔さんと居た人だ――――。
エレベーターに乗り込み閉まる扉の向こうで振り向いた顔は、たしかにあの女性だった。