略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
けれど、その人がここに居るから、一体なんだというのか。
――――『結城部長のマンションに出入りしてるのって……』
理子の言葉に胸がざわつく。
匠海にも、もちろん美郷にも関係ないかもしれないのに。
予感というものは往々にしてあり、躊躇う美郷の意思とは裏腹に、怖いもの見たさで足が勝手にエントランスへと突き進んだ。
自動ドアが開かれると、ふと漂ってきたブーケの香り。
前に感じたときと同じに見渡しても、あるのは観葉植物だけだ。
第六感が働き、思い当たるのはあの女性。
12階フロアで止まったらしいエレベーターの表示を見て、一瞬頭が白くなった。
エレベーター前で立ち尽くす美郷は、12階フロアと匠海の部屋の玄関でも同じ香りに遭遇したことを思い出した。
まさか、そんなことって……。
単なる偶然だと思ってみても、心臓がどくどくとうるさく鳴り響く。
手に持った袋を強く握ると、乾いた音がかさりと虚しくエントランスに吸い込まれた。