略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~

 上階へのボタンを押せずにいると、他の住人が別のエレベーターから降りてきた。

 たたずむ美郷を邪魔ったらしく避けて行く人の気配に、意識をはっと取り戻した。

 反射的に開いたままの扉の中に乗り込む。

 あの女性が乗った方でないことにほっとしつつも、このまま12階へ行くことに躊躇いがあった。

 もしあの女性が、匠海の家に居たら……自分がどうするのか、どうすればいいのかわからなかった。

 【閉】のボタンを押す前に、自動で扉が閉まる。


 別の家のお客様かもしれないし……。


 12階フロアには、部屋が4部屋あったはずだ。

 匠海の部屋はその一番奥。

 考えすぎる頭に冷静を言い聞かせて、行き先を急かす冷めたアナウンスに、震える指で【12】のボタンを押した。

 待ってましたと言わんばかりに動き出すエレベーター。

 軽い重力に頭と胸が重くなった気がする。

 何の対応も考えつかないまま到着したエレベーターは、律儀にここが12階であることを教えてくれた。
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