略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
美郷の気も知らず、無遠慮に扉が開放されると、さっきと同じブーケの香りが漂っていた。
おそらくあの女性の残り香と思われるものに、心臓が強張る。
しかし、恐る恐るフロアの奥を見ても、彼女の姿はない。
ほっとしたのも束の間、美郷が足を踏み出したところで、がちゃりと扉の開く音が奥の方から聞こえてきた。
どきっと心臓が飛び跳ねると、なぜか慌ててエレベーターホールの隅にある観葉植物の陰に身を潜めてしまった。
私、なんで隠れてるの……。
チーズスフレの袋が音を鳴らさないよう、微動だにせず呼吸を殺す。
「……ああ、ありがとう」
「匠海の方は? どうなの?」
静かな廊下を通って話し声が届いてくる。
間違いなく匠海が誰かと話している。
相手は……淑やかな声の女性だ。
しかも、匠海を呼び捨てるほど親密な関係らしい。
予感が、当たってしまった。