略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
ぷは、と息継ぎをするように匠海に口唇を解放される。
それでも抱き寄せられた身体は、たくましい腕に囚われたままだ。
「お前、妄想が過ぎる。まずは人の話を聞けよ」
呆れた声で目元をしかめる匠海から、何を聞くことがあるのかとぷいと顔を背ける。
「美郷」
「やです。私、惨めな思いしたくないです」
そうだ。
匠海に言い寄られたからと、まんまと彼の手中にはまって、すっかり心を奪われてしまっていた。
それをはたからしめしめと見られていたのかと思うと、自分が情けなく恥ずかしくてたまらない。
「惨めだなんて、どうしてそうなるんだよ」
「匠海さんのこと好きって思った気持ち、そうなるように仕向けられたってことでしょう? 自分の中で自然に生まれたものじゃないなんて、催眠術にかけられたことと同じじゃないですか」
そのせいで、陽翔との婚約がなくなってしまえば、美郷は晴れて独身貴族の仲間入りだ。
いや、独身になるなどどうでもいい。
意図的にかけられた暗示が解けると、美郷の気持ちは風邪が治ったかのように綺麗さっぱり無くなってしまうのだろう。
匠海に対する想いと、幸せだった気持ちがなくなってしまうことの方が、美郷にとっては辛かった。