略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~

「美郷」


 目を合わそうとはしない美郷を、匠海が覗き込んでくる。


「勘違いしてる。俺が姉貴のためだけに美郷のこと口説いてたと思ってるのか?」

「そうじゃないんですか?」 


 不貞腐れたように呟くと、匠海は呆れた溜め息を吐いた。

 面倒くさいと思われたかもしれないことに胸がずきりと痛む。


「違うに決まってるだろ。お前のこと好きだから、お前にも俺を好きになってもらいたかった以外にない。そうじゃなきゃ、もうとっくに美郷と男女の関係にあるって周りに触れて回って、婚約の話めちゃくちゃに壊してる」


 いつもの真摯的な声音に、美郷の心は単純にときめく。

 それがまんまと罠にはまった原因かと、匠海の腕から逃れようと身をひねった。


「美郷」

「いいんです、もう」


 半分ヤケになる美郷は、ジタバタとたくましい腕の中でもがく。

 なかなか離してくれない匠海のしつこさはここでも健在だったと、一年半前から言われ続けていた彼の気持ちを思い出した。

 それが全部作られた言葉だったとは、思えないことに美郷は気がついていた。
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