略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~

「美郷ちゃん」


 淑やかな声が、ジタバタと足掻く美郷に呼びかける。

 自分よりも大人っぽい女性にたしなめられているようで、結局惨めさが生まれてしまった。


「最初、匠海にあなたを口説いてもらうようにお願いしたのは、私なの。ごめんなさい。
 あなたが匠海のことを好きになれば、哀しい思いしなくて済むと思ったから」


 匠海の声に聞く耳を持たない美郷に、頭を下げてきたのは、匠海の姉だった。

 はたとして匠海からの脱出を止めると、匠海の姉は言った。


「陽翔くんとは、もう昔からずっとお互いに想い合ってた。
 そのことを伝えると、おじいさまには凄く反対されてしまって……。婚約の話が出たのはその頃。
 あなたもご存じかしら、おじいさまがまだ結城の家の実権を握っていること。おじいさまの言うことは絶対なの。
 そのことも全部匠海は知ってくれていたから、私のお願いを直ぐに引き受けてくれたの」


 やはりそうなのだ。

 匠海は、姉の恋人の婚約を解消させるために、美郷に近づいた。

 あまりに衝撃的な話に、抵抗の意思も失くす。

 匠海の気持ちを信じていたかったと期待していた胸は、じりじりと焼け付くように痛んだ。
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