略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
「最初は、私の願いを聞いてくれていたからだったけれど……でもすぐにそれは匠海本人が、自分のためにそうしたいと言ってきたわ」
「姉貴、あとは俺達ふたりで話すから」
話を遮った匠海に、匠海の姉は嫌な顔ひとつせず、納得したように微笑んだ。
「美郷ちゃん、悪いのは全部私だから。匠海を責めないであげて。
匠海はあなたのためを思って、常にあなたを最優先で守るために動いてくれていたの。そのことだけは、わかってあげて欲しい」
それじゃあ、と身を引いていく匠海の姉。
初めてじっくりとその表情を見た美郷は、場違いにも匠海の端整な顔立ちとよく似ている美人だと思った。
コツコツとヒールを鳴らすモデルスタイルの後ろ姿を黙って見送る。
婚約相手と思い合う恋敵のはずなのに、美郷は彼女に嫉妬の感情など少しも感じなかった。
それより、姉の恋路のために美郷に近づいたらしいというその理由が、棘になって心に刺さっているようだ。
その棘の痛みを撫でるように、匠海は美郷を優しく抱きしめ直して玄関の中に引き込んだ。