略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
「はい」
こと、とローテーブルにいつものカップが置かれて、コーヒーの香ばしさが立ち昇ってくる。
もうこんなことはなくなってしまうんだと思ったのはほんの一瞬のことで、いつもと同じ光景に美郷の心の棘は痛みを和らげる。
けれど、いつものように隣に座ってくる匠海に、美郷は背を向けるように座り直した。
「美郷」
「……」
匠海が自分に近づいた理由に、向き合う勇気がなかった。
呼びかけられても返事をせずにいる美郷を、匠海は後ろからぎゅっと抱きしめてきた。
「ねえ美郷。美郷の気持ち、教えて? お前の気持ちが伴ってないと、進められない話なんだ」
耳元で囁かれて、首をすくめる。
匠海の声は電話越しでも甘いと思うのに、直接吹きかけられるとこそばゆさが格段に増す。
「美郷……」
「……っ」
この前のときのように、匠海は美郷の首筋を舐る。
性的なくすぐったさに喉の奥から甘い声が漏れる。
「た、くみさんは……、私のこと本当はどう思ってるんですか?」
呼吸を乱しながら、美郷は振り絞るように触れたくない話をぶつけた。