略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~

 少し浮かれすぎていたからだろうか。

 婚約者の陽翔と対面するかもしれないと思うと、酷い罪悪感に襲われる。

 まだ婚約は解消されていない。

 匠海への気持ちに気がついてしまったのだから、婚約解消の申し出は乙成家側からしなければいけないだろう。

 けれど、両親にも祖父にもまだ言えずにいる。

 匠海からはプロポーズされたけれど、返事はまだだ。

 もちろんそうなれればいいと思っているけれど、自分ひとりで決めてどうこうできるような話ではないのだ。


 財界に名を連ねる乙成家が、沽券を気にしないわけないだろうし……。


 ここに来て婚約破棄となれば、乙成家の名前に傷がつかないとも限らない。

 事は慎重に、誰もが幸せになれる方法を探さなければならないのだ。

 佐藤代理の運転する社用車に乗り込み、師走に急く雑踏をぼんやりと眺めた。

 もしこのあと、陽翔と顔を合わせることがあるのなら、婚約についての話ができるように約束を取り付けてもいいだろうか。

 まずはやはり美郷自身の気持ちを陽翔に伝え、これからどうするか話を進めたい。
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