略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
やはり陽翔が立ち会うのだ。
想定外の面会に、心の準備などできていない。
目が合ったらどうすればいいだろう。
笑いかければいいのか、それとも婚約者だと気づいた顔をすればいいのか。
匠海と、着席を勧められる佐藤代理との会話の声が遠い。
奥から数席空けた場所に佐藤代理、その手前に匠海が座り、彼の隣に美郷が着いた。
これからの対面に緊張する美郷の膝の上では、拳が固く握られる。
爪が食い込みそうな手に、隣からあたたかなものが触れてきた。
はっとして隣を見上げると、一度だけ美郷の緊張する拳を撫でた匠海が、目を細めて見つめてくれていた。
妙に近い距離感に、どきどきと鼓動が急く。
すぐに匠海の手は離れてしまったけれど、さっきまでの緊張感は彼が撫で払ってくれたかのようだった。