略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~

 やはり陽翔が立ち会うのだ。

 想定外の面会に、心の準備などできていない。

 目が合ったらどうすればいいだろう。

 笑いかければいいのか、それとも婚約者だと気づいた顔をすればいいのか。

 匠海と、着席を勧められる佐藤代理との会話の声が遠い。

 奥から数席空けた場所に佐藤代理、その手前に匠海が座り、彼の隣に美郷が着いた。

 これからの対面に緊張する美郷の膝の上では、拳が固く握られる。

 爪が食い込みそうな手に、隣からあたたかなものが触れてきた。

 はっとして隣を見上げると、一度だけ美郷の緊張する拳を撫でた匠海が、目を細めて見つめてくれていた。

 妙に近い距離感に、どきどきと鼓動が急く。

 すぐに匠海の手は離れてしまったけれど、さっきまでの緊張感は彼が撫で払ってくれたかのようだった。
< 186 / 241 >

この作品をシェア

pagetop