略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~

 これでようやくこの空間から解放される。

 息の詰まる時間をやり過ごすのに相当な精神を使っているのに、どうやって陽翔との話を取り付けることができるのだろう。

 さっきまでの自分が本当に浮かれていたのだと思い知る。

 プライベートを仕事中に挟み込む自分を大いに反省していると、膝の上の強く握った拳に、また匠海が触れてきた。

 どきりとして横目に見ると、美郷の手を取った匠海は何食わぬ顔で、ペンを走らせる陽翔を見据えていた。


 匠海さん……


 美郷の不安を汲み取ってくれたのだろうか。

 膝の上から取り上げられた手は、匠海の大きな掌に絡みつかれる。

 あたたかな親指が手の甲を擦ってくる。

 安心してとでも言ってくれているようだ。

 佐藤代理からも、もちろん陽翔からも見えない行為に、美郷は火照る顔をうつむかせた。
< 190 / 241 >

この作品をシェア

pagetop