略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
これでようやくこの空間から解放される。
息の詰まる時間をやり過ごすのに相当な精神を使っているのに、どうやって陽翔との話を取り付けることができるのだろう。
さっきまでの自分が本当に浮かれていたのだと思い知る。
プライベートを仕事中に挟み込む自分を大いに反省していると、膝の上の強く握った拳に、また匠海が触れてきた。
どきりとして横目に見ると、美郷の手を取った匠海は何食わぬ顔で、ペンを走らせる陽翔を見据えていた。
匠海さん……
美郷の不安を汲み取ってくれたのだろうか。
膝の上から取り上げられた手は、匠海の大きな掌に絡みつかれる。
あたたかな親指が手の甲を擦ってくる。
安心してとでも言ってくれているようだ。
佐藤代理からも、もちろん陽翔からも見えない行為に、美郷は火照る顔をうつむかせた。