略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~

 社印を持ってきた優花梨がドアを開けたところで、ふたりの掌はどちらからともなく離された。

 それでも淋しさを感じなかったのは、手の中に匠海のぬくもりが残っていたからだ。


「ありがとうございます」


 無事に契約完了だ。

 三人が揃って陽翔に頭を下げる。

 美郷がバッグに書類をしまっていると、佐藤代理が他愛もなく陽翔に話しかけた。


「結城部長とは、従兄弟同士だそうで」

「ええ」

「お若いのにこんな大きなお店を取り仕切っていらっしゃって、さすがは【結城】の血筋ですね。
 おふたりともそろそろいい縁談の話でもあるんじゃないですか?」

「いえ、まだ自分にはそういった話は。やらなければならないことをたくさん抱えているもので、なかなか」


 陽翔は見てわかるような愛想笑いで話題をかわす。

 陽翔もまた、周囲に自分が婚約していることを明かしていないのだ。

 それは美郷も同じなのだけれど、陽翔の言い分は美郷のそれとは違うように感じた。

 彼が美郷と会おうとしない理由を知っているからだろうか。

 けれど、目の前でそれを言われてしまっては、美郷の立場がない。
< 191 / 241 >

この作品をシェア

pagetop