略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
社印を持ってきた優花梨がドアを開けたところで、ふたりの掌はどちらからともなく離された。
それでも淋しさを感じなかったのは、手の中に匠海のぬくもりが残っていたからだ。
「ありがとうございます」
無事に契約完了だ。
三人が揃って陽翔に頭を下げる。
美郷がバッグに書類をしまっていると、佐藤代理が他愛もなく陽翔に話しかけた。
「結城部長とは、従兄弟同士だそうで」
「ええ」
「お若いのにこんな大きなお店を取り仕切っていらっしゃって、さすがは【結城】の血筋ですね。
おふたりともそろそろいい縁談の話でもあるんじゃないですか?」
「いえ、まだ自分にはそういった話は。やらなければならないことをたくさん抱えているもので、なかなか」
陽翔は見てわかるような愛想笑いで話題をかわす。
陽翔もまた、周囲に自分が婚約していることを明かしていないのだ。
それは美郷も同じなのだけれど、陽翔の言い分は美郷のそれとは違うように感じた。
彼が美郷と会おうとしない理由を知っているからだろうか。
けれど、目の前でそれを言われてしまっては、美郷の立場がない。