略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~

 美郷だって、あのカフェで陽翔を見たとき、それが婚約者がどうかわからなかったくらいだ。

 深く傷ついたわけではないが、名刺を見せても驚きもしなかった陽翔は、自分にさっぱり興味がなかったのかもしれない。

 一目見てわかる相手ではなかったにしても、4年間も婚約者としての肩書きを持っていたのだ。

 ほんの少しあったらしい情が、しゅんと肩を落とす。

 陽翔とどう話をしようかと緊張していたのに、肩透かしもいいところだ。

 けれど、話をしようにも取り付く島がないところが本音だ。

 “初めまして”と挨拶をして“婚約解消してください”とはさすがに唐突すぎて切り出せない。

 やはり両親を通じて、相手方に申し出るのが筋かも知れないと頭を抱えていると、開いたエレベーターの扉を押さえた匠海が、佐藤代理に声をかけた。


「佐藤代理、乙成さんが体調がすぐれないとのことで、しばらく休ませてから帰社させてもいいでしょうか」

「えっ!?」


 すかさず反応したのは美郷だった。
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