略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
*


 運転席の見えない白のハイブリッドカーは、家の前で頭を下げた美郷に一度パッシングしてから発進した。

 三叉路から数十秒歩く街灯だけの暗がりも、いつもより不安が小さかったような気がする。

 それより、胸の奥がずっと仄かな熱をこもらせていて、少し息苦しいような、くすぐったいような不思議な気分だった。

 匠海の車が見えなくなると、途端に物足りなさが過ぎる。

 美郷は今まで感じたことのない気持ちに戸惑いながら、玄関のドアを開けた。


「おかえり、お姉ちゃん」

「ひゃっ!!」


 顔を上げると至近距離で美郷を出迎えたのは、今年受験の妹、愛結(あゆ)だった。


「ヌッと出てこないでよっ。びっくりするじゃない!」


 誰かが出迎えるとは思いもしなかったから、今しがたのあたたかなくすぐったさが、心臓の爆音とともに吹き飛ばされてしまった。


「今の人誰」

「えっ、え?」


 美郷と同じ黒のセミロングをもこもこのリボン付きヘアバンドでアップにし、つやつやのおでこを丸出しにしてずいと迫る真顔から仰け反った。
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