略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~

 まさか、ね……

 お忙しい方だし、大きな会社の御曹司があんな庶民の行く店に足を運ぶとも限らないし。

 それに私、陽翔さんの顔をしっかりと覚えてるわけじゃない。


 いろんな可能性を鑑みて、あれは似ているだけの人だったという話で、落ち着かせようとした。

 どうしても気になるようであれば、たしかめる手段はある。

 母が持っているはずの釣書だ。

 それを見れば、あれが婚約者の陽翔だったのかそうではなかったのかは、はっきりするはずだ。

 過去に一度見た写真の記憶が、次第に今日見た男性と重なってくる。

 思い込みを払い除けようとしても、心臓の音がどくりどくりと嫌な音を立て続ける。

 ささやかな可能性に妙な想像をさせられるのは、その男性が女性と一緒にいたからだ。


 あのふたりは、誰が見ても恋人同士だった……。


 きょうだいという可能性も無きにしも非ずだけれど、醸される雰囲気がそれとは違うように感じた。

 若干、羨ましいと思ったのもそのせいだ。
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