略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
黒の髪は軽く分けられ、清潔感が溢れている。
キリッとした目元は自信の表れのようで、そこに添えられる筋の通った鼻梁が彼の顔を一層端整に見せる。
そして、美郷の婚約者・陽翔のその顔は、今日の午後愛結と出かけた店で見たあの男性と、そっくりだった。
動揺する美郷の脈は、著しく乱れる。
心臓だけではなく、頭までもどくどくと急速な血流を感じた。
今日見たあの人は……陽翔さん、だったの……?
眩暈のしてきた頭で辿った今日の記憶が、正しいのかどうかがわからなくなってきた。
ぐらつく頭で写真に視線を落とし続ける。
落ち着け……、落ち着け私……。
もしかしたら、今見た陽翔さんの顔と店で見た男性の記憶が、すり替わっているかもしれない……。
美郷は思ったけれど、現実を受け止めきれずに“そう思いたいだけ”かもしれなかった。
重くなってきた頭を抱える。
写真を閉じ、自分の中で大げさな脈を打ち続ける鼓動を聞いた。