略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
本当に馬鹿だ。
どうしてわざわざ、この上に匠海を傷つけなければいけないのか。
線引きを怠った代償がこれだ。
美郷に『会いたい』と言ってくれる人を傷つけてしまう薄情な自分の胸が、身勝手にズキズキと痛む。
もし婚約したのが匠海だったら、こんなふうに傷つけることはなかったのに。
『それでもまだ、俺は諦めないよ』
こうやってしつこく食い下がってくる匠海の気持ちに、応えることができたら――――。
到底無理な仮定に、美郷は重い口を開いた。
「匠海さん……やっぱり、こういうことは控えませんか? 今までどおり、銀行でお話するくらいに……」
『それ、本気で思ってるのか?』
低い声音にばっさりと切られて、言葉に詰まる。
心の中を探り当てられたようで、心臓が大きく鼓動した。
『そんなに淋しそうな声で言われても、“言いたくないことを無理やり言ってる”ようにしか聞こえない』
「……っ!!」
ひゅっと息を詰め、押さえた口唇はかすかに震えていた。