【医者恋シリーズ3】エリート外科医の蜜甘求愛
外来診療時間を終えた病院内に午前中の賑やかさはない。
広い受付ロビーに人の姿はなく、清掃員が数人掃除をしているのが目に入った。
勢いで病院内を歩いているけど、市來先生に会えるかはわからないと冷静になり始めた頭で気付く。
今日のお昼近くにオペに入ったあとの姿を見かけたから、今日はもう仕事を上がって帰宅してしまっているかもしれない。
当直ということはないはずだ。
患者さんのいない外来診察室が並ぶ通路を、いつもは気にも留めないヒールの音が響いて聞こえる。
今朝、市來先生を見た外科棟へも足を運んでみたけれど、姿を見つけることはできなかった。
勢いで来てしまったけど、落ち着いてきて考えてみれば勤務中の先生に会ってどうするというのだろう。
疲れているところに押しかけて、鬱陶しいと思われるかもしれない。
急に弱気な気持ちが膨らんできて歩みが止められる。
これ以上はもうやめておいたほうがいいかと踵を返して歩き始めた時、通りすがった交差する通路の向こうから「おい」と短く呼び止められた。