【医者恋シリーズ3】エリート外科医の蜜甘求愛
控え目な足取りで一歩一歩近付いていく。
「先生、ありがとな」と言った患者さんを見送った市來先生が、やっと私の存在に気が付いた。
目が合って、とりあえずぺこりと頭を下げる。
微笑を浮かべた先生は、足早に私の元へとやってきた。
「やっと来た。会わなかったらもう出ようと思ったし」
「お世話になってます。出かけられるんですか?」
「ああ、ちょっとな。学会の関係で」
そう言った先生は「来いよ」と今歩いて来た通路を戻っていく。
市來先生の後ろをついて行きながら、向かいから通りすがる患者さんやスタッフの女性たちの視線が先生に集まっていくのを感じ取る。
すぐ前を歩く長身を仰いで、やっぱり圧倒的な存在感だなと、途端に居心地が悪くなってしまった。
いつもの脳神経外科の外来方面に向かっているかと思いきや、先を歩いていた市來先生は通りがかった一つの扉を開けて「入って」と言う。
中は物品庫か何からしく、照明は落とされしんと静かだった。
「まだ吹っ切れてないの?」