【医者恋シリーズ3】エリート外科医の蜜甘求愛
聞き覚えのある声が私の名前を呼んで、足を止められる。
「……え、椎名先生?」
振り向いた先に立っていたのは、あの最後の営業の日以来会っていなかった椎名先生だった。
スーツの姿の椎名先生は、もちろんその上に白衣は着ていない。
こんなところで会うと思っていなかったから、頭を下げることも一瞬忘れてしまっていた。
「こんにちは! いつもお世話になってます」
いつも通りの挨拶をした私を、椎名先生は優しい笑みを浮かべてクスッと笑う。
担当圏が変わってからまだ一ヶ月も経っていない。
もう、会うこともないと思ってたのに……。
「久しぶりだね、お元気そうで」
「はい、先生もお変わりありませんか?」
「うん、おかげさまで。ここの担当なんだ? うちに来てた時からそうだった?」
「いえ。こちらには、担当が変わってから伺ってます。椎名先生は、今日は……?」
さらりと聞いてみると、椎名先生は手に持っていたA4サイズの薄い水色の封筒を私に見せるようにする。
ここ、『関東医科大学附属病院』の名が下部に入っていた。
「色々あって、ここの循環器内科に出向になったんだ」
えっ……うそ。椎名先生も、ここに……?
「そう、だったんですか……」
「だから、またここで会うこともあると思うけど、よろしくね」
そう言った椎名先生は「中条さんが来てるならホッとした」なんて、ずっと好きだった爽やかな笑顔で私に笑いかけた。