【医者恋シリーズ3】エリート外科医の蜜甘求愛
「椎名先生、どうかされましたか?」
振り返った先にいたのは、さっき訪れたばかりの椎名先生だった。
何か受けそびれたことでもあったのかもしれない。
やってきた椎名先生は、片手で覆うようにしてノンフレームの眼鏡を押し上げる。
見上げる私に、穏やかな笑みを浮かべて見せた。
「あ、ごめん。仕事の用じゃないんだ。中条さん、今晩とか予定あるかな」
「え……今晩、ですか? いえ、特には」
「そうなんだ。良かったら、一緒に食事でもどうかな」
にこやかにそう言った椎名先生は、小首を傾げて私の返事を待つ。
突然のお誘いに、驚いて「えっ……」と声を漏らして固まってしまった。
「中条さん、いつも五時には仕事終わるって言ってたよね? じゃあ、六時くらいにこの辺りで待ってるから」
「え、でも、あの――」
トントン拍子で約束を取り付けられ、どうしようと困り出した時、私たちの話すむこうから「あ、中条さんまだいた!」と、薬剤部の薬剤師さん二人が向こうからやってくるのが見えた。
「それじゃ、また後ほど」
「え、あ、あの」
状況を察した椎名先生は話を締め、その場を離れていく。
どうすることもできないまま、薬剤師さんたちに捕まっていた。