【医者恋シリーズ3】エリート外科医の蜜甘求愛


「椎名先生、どうかされましたか?」


振り返った先にいたのは、さっき訪れたばかりの椎名先生だった。

何か受けそびれたことでもあったのかもしれない。

やってきた椎名先生は、片手で覆うようにしてノンフレームの眼鏡を押し上げる。

見上げる私に、穏やかな笑みを浮かべて見せた。


「あ、ごめん。仕事の用じゃないんだ。中条さん、今晩とか予定あるかな」

「え……今晩、ですか? いえ、特には」

「そうなんだ。良かったら、一緒に食事でもどうかな」


にこやかにそう言った椎名先生は、小首を傾げて私の返事を待つ。

突然のお誘いに、驚いて「えっ……」と声を漏らして固まってしまった。


「中条さん、いつも五時には仕事終わるって言ってたよね? じゃあ、六時くらいにこの辺りで待ってるから」

「え、でも、あの――」


トントン拍子で約束を取り付けられ、どうしようと困り出した時、私たちの話すむこうから「あ、中条さんまだいた!」と、薬剤部の薬剤師さん二人が向こうからやってくるのが見えた。


「それじゃ、また後ほど」

「え、あ、あの」


状況を察した椎名先生は話を締め、その場を離れていく。

どうすることもできないまま、薬剤師さんたちに捕まっていた。

< 96 / 110 >

この作品をシェア

pagetop