【医者恋シリーズ3】エリート外科医の蜜甘求愛
西に陽が沈んでいく午後六時前――。
定時に仕事を終え、身支度を済ませて関東医科大学附属病院へと向かった。
普段は社用車で向かう病院も、会社から電車で二駅と離れている。
約束の時間五分前に正面玄関近くに到着すると、すでに白衣を脱いだスーツの椎名先生の姿があった。
小走りでやってきた私の姿を見て、控え目に片手を上げる。
そこには、ずっと素敵だと思ってきた穏やかな笑顔があった。
「すみません、お待たせしました」
「待ってないよ。じゃあ、行こうか。中条さん、何が食べたい?」
「あのっ、すみません……!」
来て早々、腰を折って頭を下げる私に「どうしたの?」と椎名先生の動揺した声がかけられる。
姿勢を戻し、椎名先生の困惑した顔を真っ直ぐ見上げた。
「せっかく誘っていただきましたが、私、行けません」
「え……?」
「ごめんなさい!」
再び頭を下げた私に、椎名先生はふふっと笑う。
そこにはやっぱり戸惑ったような色が窺えた。
「椎名先生のこと、ずっと素敵だなって思ってて、最後のあの日、私……かなり勇気出しました。だけど、見事に撃沈して……でも、あれで良かったんだって、さっき気付きました」