王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
咀嚼してコクンと喉を鳴らせば、やはり桃は蕩ける甘さを口腔に残し、スゥっと喉を下る。
フレデリック様は熱の篭る眼差しで、その一部始終を見つめていた。
「……フレデリック様、美味しい桃をごちそうさまでした」
私もまた、フレデリック様の瞳から目線を逸らせずにいた。
桃が残す、甘い後味と余韻。だけどフレデリック様の透き通る瞳の方が、一層に甘い……。
「エミリー」
形のいい唇が、低く私の名前を呼ぶ。次の瞬間には、滲むくらい近くにフレデリック様の美貌が迫った。
同時に、ふわりとした感触が落ちる。
柔らかな温もりは、唇の横に一瞬だけ触れて、すぐに遠ざかる。
……え? 今のは、なに?
茫然と固まる私に、フレデリック様は壮絶な色香で微笑む。笑みを結ぶその唇から、目が離せない。