担当の営業社員は傲慢でした。【短編】
ぎりっ、噛んだ唇から僅かに血の味が染みてくる。
熱くなっていく目頭。
自然と握った拳にも力が入る。

「あー、はいはい」

キィと音がしたかと思ったら、目の前が暗くなった。
気付いたときには背中にまわったあいつの手に抱き寄せられていた。

「力抜け?
んで、いいから泣け。
な?」

「うっ、くっ、……」

あいつの胸にしがみついて泣いた。
素直に泣くと胸につかえてたものが溶けていく。
泣いてるあいだ、あいつはずっと黙って私を抱きしめてくれていた。

「落ち着いたか?」

「はい、すみませんでした」

くすんと最後に鼻を啜ると、ポケットティッシュを渡してくれた。
< 25 / 26 >

この作品をシェア

pagetop