三途の川のお茶屋さん



「幸子、……幸子」


……ん?
重い瞼を開く。半分眠ったままのぼんやりした視界に、十夜は圧倒的な存在感で飛び込んできた。

私はどうやら、十夜を待ちながら、うたた寝をしていたらしい。

「と、十夜! おかえりなさ、っ!!」

けれど最後まで言い終わる前、十夜の熱い抱擁が、言葉の続きを奪う。

「と、……十夜? 呼び出しで、何かあった?」

苦しいほどの力で、私は十夜の胸に抱き締められていた。

戸惑いや動揺よりも、これまで見た事の無い十夜の焦燥した様子に、不安と心配が湧き上がる。

十夜の腕が僅かに緩んだ隙、私は両腕を十夜の背中に回して擦った。

「……いいや、何もない。いきなり驚かせてすまなかったな」

十夜がクシャリと笑う。けれど十夜の笑みは、どこか歪に見えた。



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