三途の川のお茶屋さん
それだけじゃない、なんだか十夜が、泣きそうに見えた。
「……うそ、私の事が関係していますよね?」
何もない訳がない。
だけど十夜は、薄く微笑んで緩く首を横に振る。
「いいや、関係ない。確かに呼び出しで少し揉めて、それで苛立っていた。すまなかった」
十夜は否定したけれど、それが事実と異なる事を、私は漠然と理解していた。
……揉めた原因は、私だ。
ただ、それが何故、今なのか。
私がこの地に十夜と暮らして二十年が経つ。私の存在を問題にするのなら、これまでにいくらでも時があったはず。
けれど今、十夜は何かしらを告げられて、悩んでいるのだ。
十夜の背中に回した手に、きゅっと力を篭めた。
「十夜、憂いがあるなら聞きたい」