三途の川のお茶屋さん


船の運航は船頭に任せており、平時であれば俺が埠頭で直接乗船を見守るという事はしていない。けれどこの日ばかりは居ても立ってもいられずに埠頭に向かった。

「なんだ、呼んでもないのに十夜が埠頭に来るなんて珍しいじゃないか? 何かあったのか?」

馴染みの船頭が俺を見つけ、歩み寄った。

「懸人、まぁ少し思うところがあってな」
「? へぇ? まぁ、不測の事態じゃなければいいんだ」

懸人は首を傾げたが、それ以上追及をする事もなく、船の点検に戻っていった。

そうして俺は埠頭に立ち、出航していく船を見送った。


「本日最終便、まもなく搭乗開始いたしまーす!」


懸人が声を張り、まもなく最終の船が出る。

凪いだ川面、乗船する人々にも別段変わった様子はない。常と変わりなく、一日が終わる。

……ふむ、取り越し苦労だったか。



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