三途の川のお茶屋さん


これ以上ここにいても、何があろう筈もない。踵を返そうとした。

ん?
そんな時、一人の女がこちらに向かって歩いてきた。このように出航の直前になってやってくるのは稀な事だった。

「おい女、まもなく出航だ。急げよ」

俺は親切心から女に一声掛けてやった。

俯いていた女が、俺を見上げた。女と、俺の視線が絡む。


瞬間、俺は衝撃に息を呑んだ。

人、だよな!? 一瞬戸惑ったのは、女の奥に煌く何かを見たからだった。

女の煌きはどこか神性に通じるような気もしたが、女の生前の徳の高さと思えば納得も出来た。

そもそも三途の川に来るのだから、死した魂以外にあり得ない。

……とはいえ何故、女の目は現の光を残したままここにある!?

これも奇異な事だった。

「あの、私は死んでしまったのでしょうか?」



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