三途の川のお茶屋さん
メニューの候補が三つまで絞れた後、私は試作品をそれと知れぬように十夜に出した。
お茶屋は私の独断で開業を決めたから、十夜にメニューの相談を持ち掛けるのは憚られた。
けれどどうせお店を出すのなら、十夜が少しでも好ましと思えるメニューを提供したいと思った。
同時に、十夜の好物なら廃棄も多少なり減らせるだろうと、そんな打算もあった。
そうしてまず、初日はお饅頭を出した。
十夜は試作のお饅頭をペロリと完食した。
「十夜はお饅頭、好きですか?」
「いや、好きなのはあんこだ。皮は別段好まん」
「……そうですか」
感触は悪くない。けれど、いっぱい提供して皮だけ残されてしまっては、うまくない。
翌日は、羊羹を出した。
十夜はちびちびと食べ進めてはいるものの、なかなか皿は空かない。
「……十夜は羊羹、嫌いですか? 」
「嫌いではない。俺は出された物は残さん」