三途の川のお茶屋さん


阿修羅の道……。神であれば、それを行く痛みと重みを知らぬ者はいない。

決して懸人に同情は出来ない。

けれど幼い胸の内を激情で滾らせる懸人を想像すれば、苦い思いも湧き上がる。

「……神威様、ひとつ分からないのです。懸人は弑した幸子の魂を待ち、長い時を船頭として過ごしました。それは憎しみでなく、幸子への情からだったと思うのです。それが何故、懸人は再び巡り逢えた幸子を狙うに至ったのでしょう?」

「分らんのか? お前じゃよ、十夜? 若輩と侮る周囲の目を隠れ蓑に、力を付け、着実に神としての格を上げていく、お前さんじゃ。そんなお前と幸子さんが、想い合ってしまったからだ」

俺と幸子が想い合い、それと懸人の凶行がどうして繋がるのか、俺にはまるで分らなかった。

「懸人は神性を無くしても、本能で其方の能力を読み取っておる。あれは妹神の誕生によって栄光に破れた。二度と己が手には出来ないと知りながら、それでも妄執を捨てきれなかったのだ。幸子さんがお前と番い、天界に君臨する。そんな未来は懸人にとって、とても許容できん悪夢だったのだろう」



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