三途の川のお茶屋さん
「……神威様、俺には正直分りかねます。太一様も、そうだ。何故、皆意味もない妄執に憑りつかれ、身を滅ぼしてしまうのでしょう?」
神の身で、男女に関わらず兄弟という存在を持てたなら、それはどれほどに得難くどれほどに尊い事か。
もし俺に弟妹があったなら、嫉妬などつまらぬ感情など持つ余地もない。俺の持てる全てで、慈しむに違いない。
「意味もない、そう言い切れぬから皆、憑りつかれてしまうんじゃよ。十夜、権力や名声に固執せぬお前こそが、きっと一番強い。権力や名声、そんな虚像に固執すれば、それは弱さだ」
……権力も名声も、そんな物はどれも取るに足らない。俺が唯一固執するとすれば、それは幸子、ただ一人だ。
「十夜、お前は意外と分かりやすいな。のう十夜、以前儂が、幸子さんを中央で預からせて欲しいと言ったのは、取り消すぞ」
神威様は俺に、柔らかな眼差しを向けた。