三途の川のお茶屋さん


十夜も神威様の思いに触れたのははじめてのようで、掛ける言葉に窮していた。

場が水を打たように、シンと静まり返る。

けれど、そんな沈黙を破ったのは、神威様だった。

「ところで幸子さん、儂の事を覚えておるじゃろうか?」
「は、はい! 神威様は以前『ほほえみ茶屋』にいらっしゃっていただいていますよね? 満席で、テイクアウトをしていただきました」

神威様に水を向けられて、慌てて答える。

「おや、覚えていて下さったのですね。大変美味しいお団子で、あの味が忘れられません」
「なんと! 神威様が幸子の団子を買っていたとは初耳ですね。神威様がどこぞから幸子を見て女神と判断した事は聞かされていましたが、まさか団子の持ち帰りまでしていたとは知りませんでした。三途の川にいらっしゃったなら、俺にも一声掛けて下さればよかったものを。神威様もお人が悪い」



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