三途の川のお茶屋さん
一人で切り盛りすると啖呵を切って始めた店だ。それを十夜任せにしてしまう事への心苦しさは、もちろんある。
だけど、お母さんとの時間は有限で、しかも二度と得られない。十夜の労わりによって与えられた、お母さんとの時間。
素直にありがたいと、今は甘えさせてもらおうと思った。
けれど十夜の姿が消えた後、お母さんが私を抱く手をそっと解く。
「好きで始めたご商売なのでしょう? ならば、どんな時でもしっかりとお客様をお迎えしなくちゃいけないわ」
そうしてやんわりと、けれどしっかりとした声音で告げる。
「貴方なら大丈夫、だーいじょうぶよ、ね?」
抱擁を解いたお母さんは、最後に励ますようにトントンと二回、背中を叩いた。
目が覚める思いがした。身につまされる言葉だった。